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Travel and Textile: Kachchh, Gujarat

グジャラート州 カッチ地方 2020.07.04
グジャラート州 カッチ地方

アーメダバード(Ahmedabad)から約6時間、車に乗り続けるとたどり着く町 "ブジ(Bhuj)" 。ここはテキスタイル好きならば一度は訪れたい魅力に溢れた小さな町。
観光スポットでありながら、周辺の村々ではタイダイ(絞染め)や 手織り布、刺繍にブロックプリントなどインド手仕事の全てを見ることのできるテキスタイルデザイナーにとっては桃源郷のような場所。

3月、観光客の訪れるハイシーズン(インドの冬)が終わりを告げ、灼熱の太陽が地上を照らす頃、商品づくりのため村へと向かった。

この時期(最高温度42°)にいる外国人はほとんどが生地に魅せられた人々のみ、宿もたったの1人という環境。
しばらく人が泊まっていなかったからか、蛇口から茶色の水が流れてくる。
でも職人に会えるかと思うと、その辛さも些細なことであるように克服できるから不思議だ。

次の日、今回のテーマでもある Kala Cotton / Deshi wool を使う織り手さんに会いにいく。
Kala Cotton とは、品種改良のなされていない原種綿花のこと。
現在では生産性を高めるため外国で品種改良された綿花が、インド国内で育てられている。
この地域で昔からある品種は生育が遅く、だけれども水が少量でも成長し農薬を使用していないため農夫の健康を損ねることもない。
まさしく、土地とともに生きてきた種といえる。

繊維としては短く、織り上がりは少しざらつく風合いがあるけれど、洗いを重ねていくとふっくらした風合い。

技術の進化とともに、私たちは色々と整えられた環境で沢山のものに囲まれ、あるべき生地の風合いなどを忘れてしまっているのかなとも思った。
洗うことにより変わっていく風合い、使っていく工程が楽しみになるような生地。

ある職人さんと話していて、「手紡ぎはしていますか」と聞くと、「ここらへんでは機械紡ぎだよ、手では紡いでいないよ」と言われた。
そうなのか、と少し残念な気持ちもあったが、機械紡ぎ糸・手織り布で商品の制作をお願いした。

話は変わるが、Jaipur という拠点の町へ戻り、志を同じくする友人と話していて、とても納得したことがある。私が手紡ぎの話をすると、「アンバーチャルカで糸を紡ぐのに、ハンドルを回すだけの仕事が、どれだけ人の負担になると思う? 1日やっていたら腕を痛めてしまうよね。しかもその人に考えるという余白もあたえず、毎日回すだけの仕事がその人のためになるのだろうか? 電気があるのならば、電気を使えば良い。手紡ぎのあるべき姿はそれが人々にとって良い場合である。」と。

「例えば、小さな村で電気がなくできることが限られている場合、家に1日中いて隙間の時間に紡ぐことでお金になる場合など、人々にとってそれが1つの手段であるときに、手紡ぎということが価値のある技法になるんだよ。」

日本という国にいると、Khadi という言葉をブランドとして捉えていて、手紡ぎということに単に価値を見出してしまうが、今まさに住んでその地で活動している友人の話を聞いて、改めて考えなおそうと思った。
手仕事がなくなってしまうのは寂しい 、しかし私たちが手仕事を強制しているかもしれないと。
それが人の生活を改善できないのであれば、全ての人にとって良いものとは言えないと思えるようになった。

※ アンバーチャルカ沢山の糸を一度に紡げる機械。回すのは人の手であったり、ソーラーパネルであったり、電気の力を使用することもある。