樹々が新緑に包まれるころ、工房内では藍色の生地が風に揺れる。
その布は、ハンガリーで "Kékfestés - 青色に染められた布" と呼ばれる200年以上の歴史をもつ藍染布。
中国やインドで染められてきた藍染は、17世紀にインドよりフランスへ伝達。瞬く間に貴族の間で人々の心を掴んでいった。国内産業の衰退に危機感を感じた各国によって、同時に酸を使う危険性から、教会により "悪魔の仕事" として一時禁止されたが、オランダを経由してヨーロッパ内に広まっていく。
東欧諸国を経由してハンガリーへ伝達。18世紀には、染め組合が各地に現れる。技法は組合内で秘匿されつつも、100ほどの工房まで広がっていったという。青と白のコントラストが美しい布は、農村地域で農民により愛され民族衣装の基礎を築いていった。
その後、歴史の波に翻弄され経済危機や大量生産生地の台頭、ソビエト占領下の工房閉鎖などによって衰退。現在では周辺諸国を含めて8つ程の工房を残すのみという。
インドより伝達したブロックプリント (木版:木を彫刻しスタンプのように染める技法) によって染められる生地は、のちに機械化もされた。長い木版を機械に設置し染めていく工程は、機械化とはいえ人間の補助的役割を果たすシンプルな構造である。また、彫刻で仕上げる木版のほか、釘打ちの技法でつくられた版は、繊細な花模様をつくりだしアジア諸国では見られない可憐な柄がうみだされる。のちに、その美しい生地は "Block print and Indigo dye" として、2018年にユネスコ無形文化遺産として登録されている。
都市から遠く離れた小さな村の白壁に囲まれた工房では、今でも美しい藍色の布が染められている。
Source: kekfestocotton