窓から差し込む光のなか、規則的なリズムが響く。
この音の正体は "ブロックプリント" とよばれ、何世紀にもわたり受け継がれてきたシンプルかつ、美しい染色技法のこと。
ブロックプリント最古の布は、エジプト・フスタット(Fustat)遺跡にて9世紀ごろに発見された。国内での繁栄は12世紀ごろ、グジャラート州を経て北インド・ラジャスタン州でも発展を遂げていく。ラジャスタン州ジャイプール周辺では王室の庇護のもと、水源が豊富なサンガネールが生産の拠点となり、約300年前にバグルーへと派生していった。王室のために布を染めるサンガネールに対し、バグルーは地元の村人のため日常の布を染めてきたという。バグルーは、現在でも天然染料での染色を行っている貴重な生産地である。
その地域で染色に従事する人々は "チッパ (Chippa)" とよばれ、現代も姓として残っている。かれらは彫り師・染め師などからなり、布はさまざまな人と工程を経てつくられていく。
まず、彫り師は柄を木材へ転写し彫刻する。木版は上下と左右に柄がつながるよう彫られなければならない。それは大きな柄を染めるうえで重要な工程のひとつである。その木版は染め師のもとへ渡り、生地は "ミロバラン(果実の種)" で下染めされ、鉱物や植物など "鉄(黒)/茜(赤)/鉄錆(茶)/インディゴ(青)" にて染色、洗いを繰り返し、色合いの複雑な布が染め上がる。
素朴な色合いを重ね合わせていく技法、柄の連続による不規則性、それは機械生産にはない美しさをつくりだし、染料の飛沫やムラは生地に奥行きを与え、唯一無二の特別な一枚となる。
今日も、バグルーの工房ではリズミカルな音楽が鳴り響き、美しい生地が染められていく。
Source: Google Arts & Culture: "Block Printing on Textiles in India" by By Ritu SethiD'source: "Block Printing - Sanganer" by Prof. Bibhudutta Baral, Ms. Anisha Crasto and Ms. Anushree